大谷石製品の受注・加工・出荷まで~実際の例(石塀・東京への配送)でご紹介~
当社は、大谷石の地元宇都宮市にて、原石から工場で加工し、様々な大谷石の製品を加工生産しております。今回はその受注、加工、出荷までの様子を、石塀に使用される製品を例にご紹介いたします。
今回のご依頼は、大谷石の石塀が古くなった・壊れたなどの理由で、その部分に継ぎ足すための大谷石を製作してほしいという内容でした。以前からお世話になっている、ホームページを通じてご依頼をいただているお客様です。ご依頼をいただくと、電話やFAX、メールなどでお客様とやり取りをして、細目中目・寸法などの確認、納期や搬入先、お見積りや入金等について、納得のいくところまでお打ち合わせします。発注書、入金等が確認できましたら、製作図をもとに当社工場にて製作に入ります。
ここからは、実際の例を見ながら、作業の流れをご紹介してまいります。
受注
こちらは、今回ご注文をいただいた大谷石、石番①~③まで、それぞれ必要な大谷石の寸法や厚み・数量、石種や仕上げなどが記載されています。ご一緒にお送りいただいた石塀の写真も参考に、何本の大谷石原石を使うか考え、確保したり作成方法を考えたりします。
今回の既存の石塀はかなり古く苔も生えているようなものでしたが、仕上がりなどもできる限り既存の石に近いように製作して納品となります。ご依頼いただいた石種は「大谷石中目」、仕上げは「割肌ツル目」と記載されています。石の種類はだいたい中目か細目なのですが、今回はこちらで細目の方が適していると判断して製作に入りました。
原石
こちらは大谷石の原石です。中目細目ともに、ひとつが高さ320mm×奥行360mm×950mmほどあり、重さが200kgほどあります。
切落し
大谷石の原石を中型コーピングマシンで、まず高さ方向300mmにカットして決めます。その時に、切り落としが出ます。写真は、その際に出た切り落としです。幅決めや厚み決めは、作業中角欠けを起こすため、最後に行います。
移動1
高さ決めした後、大谷石をフォークリフトで作業場まで運びます。
すみ出し
こちらは石番②の石です。クレーンでつるした大谷石を、作業台にのせて「すみ出し」(寸法出し)をします。
こやすけ四方はがし
「コヤスケ」というノミを石にあてて、ハンマーですみ線手前ではずります。
平のみ四方はがし
コヤスケでおおよそ はずったあとは、すみ線ピッタリに平ノミをあて、ハンマーでたたいて完全なラインを出します。
割肌のみ落とし
大谷石の天場を四方はずったら、残った平らな部分を、よつばエアーチョッパーという機械ノミでつつきます。今回の仕上げのご指定は「割肌ツル目」でしたので、割肌状になるように つついています。
割肌仕上げ
つつきあげた大谷石表面は、このように少し跡が残ります。
ノミつき仕上げ
エアーチョッパーについた よつばノミをはずし、一本ノミに交換して、ななめ45度に削って「ツル目」にしていきます。「ツル目」の”ツル”は、「つるはし」に由来します。昔はつるはしで跡を付けていましたが、現在では一本ノミでこのようにして跡を付けて「ツル目」にします。
作業風景
作業は、このような形で頑丈な台の上で行います。効率よく仕事ができるように角度をつけて並べ、怪我のないように注意しながら作業します。側面を作業するときは、2人がかり人力で起こします。けずった大谷石のごみがたまったら、こまめに掃除して足場を確保しながら行います。
ワイヤーブラシ傷落とし
割肌仕上げした時のよつばノミのあとがブツブツしているので、そこをワイヤーブラシでこすり消します。写真手前側はこすり消した後です。加工した跡が自然になるようにします。
割肌のみつき完成
これで、大谷石表面の「割肌ツル目」仕上げの完成です。表面の斜めに跡が付いている部分が「ツル目」仕上げです。
移動準備・移動
完成したものを、カットする場所まで移動するため、クレーンで持ち上げています。重さはだいたい150kg近くあります。「はさみ」でしっかり挟み込んで持ち上げます。その後、表面加工が終了した大谷石を、再度中口径コーピングマシーンで切るため移動します。
厚み決め成形
割肌ツル目にした面を、その奥にある石の定規に合わせて、その反対側を切断、厚み決めをします。
幅決め成形
次は幅決めです。現在950mmほどの長さのものを、ご指定の900mmにカットします。5本並べた大谷石を直角定規に合わせて行います。
梱包出荷
すべての面、角が成形されました。角欠けしないよう、慎重に梱包します。石番①が9本、②が1本、③が3本、合計13本すべてきれいに梱包まで完了です。濡れると重みも増してしまいますので、出荷日までに濡れないよう、倉庫で保管します。
積み込み・出荷
出荷日が決まったら配送です。東京都内、横浜あたりまでは自社トラックで自社運転手が送り先住所まで運んでいますが、少量の場合や、九州など送り先が遠方の際は、西濃便・日通便に集荷してもらい出荷しています。基本的には、フォークリフトの有無なども含め、お客様と調整の上配送しています。今回の配送先は東京都内でしたので、自社トラックで配送しました。
以上、大谷石製品の受注から加工、出荷までの様子でした。大谷石は、今回のような石塀だけでなく、店舗や住宅の外装・内装などにも使用されますが、ご依頼にあたって、「床に貼る場合、厚みはどうしたらいいか」「風化している大谷石を新しくするにはどうしたらいいか」などのお問い合わせもよくいただきます。大谷石についてなにかご不明な点がある場合は、なんでもご相談いただければと思います。状況やご希望に合わせて、最適な方法や仕上げ等をご提案いたします。